演奏とは勝負ではなく、調和
最近、お稽古を通じて、伴奏楽器の指導者として何を指導すべきかを考える時があります。
私は民謡、端唄の三味線演奏家ですが、多くの人が三味線のテクニックや音色に魅了され、プロフェッショナルからアマチュアまで、様々な層がこの美しい楽器を演奏しています。
しかし、コンクールは別として、演奏会や発表会は単に技術的な優越性を競う場ではありません。
いつもお弟子さんには、"演奏とは勝負ではなく、調和" を大事にするように伝えています。
技術と心
演奏は確かにテクニックが要りますが、それ以上に心が大切です。初心者が高度なテクニックを持つプロフェッショナルと比較することは容易ですが、そのような比較はあまり意味をなさないものです。なぜなら、優れた演奏とはテクニックだけではなく、その背後にある情熱や意味、そして聴衆とのコミュニケーションによって成り立っているからです。
調和の精神
三味線音楽はしばしばアンサンブルで演奏されます。このとき重要なのは、各楽器がどれだけうまく調和できるか、という点です。一人の演奏者が突出しても、全体のバランスが崩れてしまいます。そのため、演奏者同士の信頼とリスペクトが不可欠です。この調和の精神は、単なる音楽的な調和だけでなく、唄の伴奏をするうえでの調和にも通じるものがあります。
演奏が素晴しい理由のひとつとして、お互いの演奏を尊重し合い、美しい調和を生み出していること。
それは技術的な競争ではなく、心の通った調和によるものです。
最後に
技術的な勝負を超えたところに、音楽の魅力があります。それは、人と人とが繋がり、共感を生む空間です。そして、その最中で初めて、真に価値ある音楽が生まれると私は思います。
いつも三味線を手にするときは、単なる技術的な高低ではなく、どれだけ心を込めて調和の中で演奏できるかを考えてみる事。それが、心ある伴奏や演奏につながると信じています。
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