「芸は見せるもの」──録画を見るという学びのかたち
- 﨑 秀五郎
- 3月29日
- 読了時間: 2分
三味線を教えていると、演奏技術だけでなく、構え方や所作の美しさについてもお伝えする機会が多くあります。
私がよく言うのは、**「石のように構え、水のように奏でる」**ということ。
余計な動きをせず、しっかりと静かに構える。その上で、音はしなやかに流れるように奏でる。この静と動のコントラストこそが、三味線という芸の魅力を際立たせてくれます。
構えの美しさは、実は音にも影響します。姿勢が整えば、音も整う。そして、見る人の心をも整えるのです。
最近では、自分の演奏を録画して見返すことも、稽古のひとつの手段としておすすめしています。でもこれは、何かを「反省するため」ではありません。**「次の自分を育てるための、学びの時間」**なのです。
自分では気づかない小さな癖。ほんの少し傾いた姿勢や、無意識の手の動き。それらは、客席からは見えないかもしれませんが、自分の中に「気づき」をくれる宝物です。
また、自分の録画だけでなく、他人の演奏映像を見ることもとても学びになります。「こんな表現があるのか」「なるほど、こういう間の取り方もあるんだな」そんなふうに、新しい視点を与えてくれます。
ここで大切にしたいのは、**“競感(きょうかん)”ではなく、“共感(きょうかん)”**です。芸の世界は、比べ合うものではありません。それぞれの違いを尊重し合いながら、共に育っていくもの。
誰かの芸を見て、「自分も頑張ろう」と感じること。それは、優しい気づきと温かな学びに満ちた、芸の道の豊かさだと思います。
芸は、ただ上手に演奏するだけではありません。その姿・たたずまい・空気までもが「芸」なのです。
ぜひみなさんも、一度ご自分の姿を録画してみてください。恥ずかしがる必要はありません。未来の自分への、小さな贈り物になりますように。
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